
TPRMとは?
事例で学ぶサプライチェーンリスクの可視化手法

【目次】
はじめに「あなたの会社の見えないリスク、見えていますか?」
現代の企業活動は、クラウドサービスや外部委託、サプライヤーとの連携など、複雑なサプライチェーンによって成り立っています。こうした分業制度は効率を高める一方で、自社では把握しきれないセキュリティリスクを生み出しています。
実際に、近年発生した大規模な事業停止やサービス障害の中には、委託先や取引先が起点となったケースも少なくありません。
あなたの会社を支える数百、数千の取引先のセキュリティリスクを、どこまで正確に把握できているでしょうか。
多くの企業では、取引開始時にセキュリティアンケートを実施し、その回答を管理するアナログな方法が一般的です。しかし、このやり方は膨大な管理負荷を伴い、担当者の経験に依存しやすいという課題を抱えています。結果として、リスクの見落としや実態と異なる評価が行われてしまうケースも少なくありません。
いま企業に求められているのは、こうした「見えないリスク」を継続的に可視化・管理する仕組みです。
TPRMとは何か?〜サードパーティー・リスクマネジメントの本質〜
TPRM(Third Party Risk Management)とは、企業が外部委託先や取引先に起因するリスクを、体系的かつ継続的に管理するためのリスク管理アプローチです。
情報漏洩やコンプライアンス違反、サイバー攻撃など、近年問題となっているインシデントの多くは、自社ではなく「他社」を起点に発生しています。こうした状況において、従来の「一度きりのチェックリスト提出」だけでリスク管理を完結させることは、十分とは言えないケースも増えています。
TPRMの特長は、取引先のセキュリティ状況を静的ではなく、動的に捉える点にあります。継続的な監視と客観的な評価指標(セキュリティスコア)を用いることで、リスクの兆候を早期に把握し、対応の優先順位を明確にすることが可能になります。
その結果、企業は属人的な判断から脱却し、経営・現場の双方にとって説明可能な、再現性のあるリスク管理体制を実現できます。
なぜ今TPRMが必須なのか?〜4つの背景〜
企業がTPRMに取り組む理由は、単なるセキュリティ対策強化ではありません。サプライチェーンの複雑化により、「他社に起因するリスク」が事業継続や経営判断そのものに影響を及ぼす時代に入っています。
実際に、取引先で発生したセキュリティ事故をきっかけに、自社の業務停止や業績悪化、ブランド毀損につながるケースが増えています。ここでは、TPRMが「任意の取り組み」から「必須の経営課題」へと変化しつつある背景を、具体的な事例とともに整理します。
①事業継続への影響
サプライチェーンの一部で発生したセキュリティインシデントが、自社の業務停止や製品供給の遅延を引き起こす事例が増えています。
事例:
国内の製造業企業の一部では、セキュリティ水準が低いサプライヤー経由で不正侵入を許し、国内数十か所の工場が停止しました。その結果、1万台以上の生産が見送られ、巨額の損失が発生しました。
重要なのは、このインシデントが自社ではなく、「取引先」を起点に発生した点です。TPRMは、こうしたサプライチェーンに潜む「見えない鎖」を可視化し、事業停止リスクを未然に把握するための手段です。
②攻撃経路の変化
近年のサイバー攻撃では、セキュリティが強固な企業本体ではなく、防御が手薄な委託先や関連会社が狙われる傾向があります。
事例:
インフラ関連企業の委託業務において、外部委託先のランサムウェア感染を起点に、グループ企業全体へ被害が拡大しました。業務が滞り、約6億円の純利益下方修正を余儀なくされました。
自社だけで対策を強化しても、サプライチェーン全体に「弱点」が残っていれば効果が限定的になる場合があります。TPRMは、サプライチェーン全体での防御体制を構築するために不可欠です。
③説明責任と管理責任
たとえ外部起因の事故でも、現在では委託元企業が説明責任・管理責任を問われるケースが増えています。
事例:
金融・保険分野や大規模サービス事業者では、委託先のセキュリティ不備を起点とした情報漏洩の報告が相次いでいます。直接の原因は委託先にあったものの、最終的には委託元企業が社会的な批判の矢面に立ち、信用が大きく損なわれ、ブランド価値の毀損と賠償リスクが顕在化しました。
TPRMは、こうした状況において「適切な管理を行っていた」と説明するための客観的な根拠を提供する基盤となります。
④法規制と顧客要求の強化
近年、改正個人情報保護法や経済安全保障推進法、EUのNIS2指令、米国の大統領令など、国内外でサードパーティを含めたセキュリティ管理を企業に求める動きが加速しています。
これらの規制は、対象国で事業を行う企業だけでなく、そのサプライヤーや委託先として関わる日本企業にも直接的な影響を及ぼします。自社が直接の規制対象でなかったとしても、取引先からセキュリティ体制の説明や改善を求められるケースは、今後さらに増えていくでしょう。
こうした環境変化の中で、TPRMは単なるセキュリティ施策ではなく、法令遵守や事業継続の前提となる経営のインフラ課題になりつつあります。
TPRMソリューションの選択肢〜Security ScorecardとPanorays〜
TPRMを実現する手段としては、複数のアプローチを持つソリューションが存在します。なかでも今回は、外部評価を軸にしたタイプと、アンケートを軸にしたタイプをご紹介します。
- Security Scorecard(セキュリティスコアカード)
外部から観測可能な情報をもとにセキュリティスコアを算出し、取引先のリスク状況を継続的にモニタリングできる点が特徴です。数千社以上の企業を対象にしたスコアリング実績があり、客観性や業界標準としての信頼性を重視する企業で活用されています。
- Panorays(パノレイズ)
アンケート機能を通じてサプライヤーと直接コミュニケーションを取りながら、評価と改善を一体で進められる点に強みがあります。自動化されたワークフローにより、ベンダーとのやり取りや進捗管理を効率化できるため、実務負荷を抑えながら運用したい企業に適しています。
これらのTPRMソリューションは、単なるチェックリストではなく、継続的なリスク評価と改善支援を可能にします。導入にあたっては、自社の業種・規模に加え、既存システムとの連携性、レポーティングのしやすさ、運用負荷やコストなどを踏まえ、「自社の管理スタイルに合うかどうか」を総合的に判断することが重要です。
TPRM導入がもたらす4つの効果
TPRMは単なるリスク管理ツールではありません。導入することで、サードパーティリスクへの対応が属人的な作業から脱却し、業務効率化や意思決定支援、企業の信頼性向上などにつながります。
ここでは、TPRM導入によって企業にもたらされる代表的な4つのメリットを紹介します。
1. 虚偽報告の撲滅とリスクの可視化
客観的なスコアや評価指標を用いることで、担当者の経験や勘に頼らないリスク把握が可能になります。これにより、属人化を排除し、虚偽報告や認識のズレを防ぎ、どこにどの程度のリスクがあるのかを正確に可視化することが可能になります。また、リスクが定量的に明示されるため、対応の優先順位付けが可能になり、限られたリソースを効果的に配分できるようになります。
2. 経営層への報告支援
TPRMでは、リスク状況を定量的な指標として可視化できます。そのため、「これまでずっと大丈夫だったので問題ないです」といった根拠のない説明ではなく、数値に基づいた報告が可能になります。経営層の理解が進むことで、セキュリティ投資の必要性が共有されやすくなり、予算確保や体制整備の後押しにもつながります。
3. 企業価値の向上
サプライチェーン全体を意識した透明性のある管理体制は、取引先や顧客からの信頼性を高めます。セキュリティ対策が「守り」だけでなく、企業のブランド価値や信用力を高める要素として評価される時代において、TPRMは取引継続や新規ビジネス獲得における重要な差別化要素となります。
4. 管理業務の効率化
脆弱性確認、アンケート送付、回答集計などの煩雑な作業を自動化することで、担当者の運用負荷を大幅に軽減できます。日々の管理業務に追われる状態から脱却し、リスク分析や改善施策の検討といった、より戦略的な業務に集中できる点も、TPRM導入の大きな効果です。

未来への投資としてのTPRM
TPRMは、単なるセキュリティ対策ではなく、サプライチェーンの複雑化が進む現代において、事業継続・経営判断・法令対応を支える「基盤」となる投資です。すでに多くの大手企業では、サードパーティリスクを個別管理ではなく、TPRMとして体系的に捉える動きが進んでいます。今後はこうした取り組みが特別なものではなく、企業として備えるべき当然の前提になっていくでしょう。
特にグローバル市場と関わる企業にとっては、海外規制や取引先からの要請に応えるうえでも、TPRMの重要性は急速に高まっています。
あなたの会社も、今こそ「見えないリスク」を可視化し、場当たり的な対応から脱却するタイミングに来ています。TPRMは、セキュリティ担当者だけでなく、経営層、調達部門、法務部門など、全社的に取り組むべき経営課題です。
将来の事業を止めないために、TPRMは企業の未来を守るための確かな一歩となります。
TPRM導入の第一歩はこちらから
TPRMソリューションの詳細を見る
セキュリティ・リスク・スコアリングシステム「SecurityScorecard」
サプライチェーンセキュリティリスク管理システム「Panorays」
https://security.dentsusoken.com/panorays/
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